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椅子の歴史

 美しい家具は、建築空間をより豊かにします。もちろん機能面でも豊かであることが大切です。

 まだその奥があるかもしれませんが、私が調べた限りにおいて家具の始まりは、今から約5000年前[紀元前3000年~500年]古代エジプトからというのが定説になっているようです。その理由は、ピラミッドの中から多くの家具が発掘されたことによるためです。そして、当時の家具というのは支配者の権力の象徴であったとされています。

 この椅子は、エジプトにおいてその権力のトップに立っていた有名なツタンカーメン王の「黄金の玉座」です。全体を金箔で装飾され、太陽神の前にツタンカーメン王とアンケセナメン王妃が描かれています。肘掛の先端には、玉座を護るライオンの像があります。

 実際は発掘されていないだけで、もっと昔から家具のようなものを使っていたのかもしれませんが、立証できる中で最も古いものがこの玉座なのでしょう。椅子の原点は、ただの石のような気もします。腰掛けるという行為でいえば、階段も時に椅子になり得ます。

 それにしても、5000年も前からこのような黄金で精巧なものがあるとは、先人の知恵と技術の深さに驚かされます。

 先日、美術品であるナポレオンの椅子に座りたい衝動を抑えきれなかった職員がその椅子に座ってしまい、座面が破れ修復したというニュースがありましたが、気持ちは分からなくもないですね。

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